
新しい年を迎えた1月の半ば頃、伊賀地方の各地区では、大般若経転読の法要、通称”大般若(だいはんにゃ)”が行われます。

大般若経とは、正式な名前を「大般若波羅蜜多経」といいます。
今から1300年以上前に中国(唐の国)の三蔵法師玄奘(さんぞうほうしげんじょう)という僧侶が16年の間旅をしてインド(天竺)から持ち帰り、その後4年を費やして翻訳(漢訳)したという、小品般若、大品般若、金剛般若、文殊般若、秘密般若、理趣般若などさまざまな般若部経典の大全集で、その数は何と600巻に至ります。
内容は、「般若波羅密」と訳される”悟りに至る智恵”を説く諸経典を集成したもので、「色即是空 空即是色」、一切の存在はすべて空であるという空間思想を説いているとされています。
この法要は、導師が説草を唱える合間に、大般若経600巻を複数の僧侶で転読(てんどく)し、地区の安全、五穀豊穣、また地区住民の厄災消除、家内安全を祈願するものです。転読とは、経本を1巻1巻正面で広げ流し読むことで、それによって清らかな”般若の風”が起きるとされています。
また、それぞれの僧侶が、1巻1巻「大般若波羅蜜多経 巻第○○(巻数) 唐三蔵法師玄奘奉詔訳ー!!」と、大音声で経巻数を唱え、最後に「調伏一切大魔最勝成就!」と唱え、締めくくります。
当山常福寺の檀家は、大きく分けて三地区に分かれます。各地区それぞれ、毎年決った日時で法要を行っております。地区の皆さんのみならず、お近くにお住みで興味を持たれた方は、どうぞ一度ご参加されてください。
日 時 |
場 所 |
会 場 |
1月10日 |
13時半 |
三重県名張市上小波田地区 |
於上小波田公民館 |
1月12日 |
14時 |
三重県伊賀市上郡 |
於蓮勝寺(兼務寺) |
1月14日 |
13時半 |
三重県名張市下小波田地区 |
於下小波田公民館 |
1月15日 |
14時 |
三重県伊賀市高瀬 |
於蓮花寺(兼務寺) |
1月18日 |
14時 |
三重県伊賀市古郡 |
於常福寺 |
…ところで、先に述べた僧侶のお名前「三蔵法師玄奘」、どこかで聞き覚えがありませんか?
そう、有名な中国の古典小説「西遊記(さいゆうき)」に登場する主人公の一人です。
三蔵法師が、孫悟空、猪八戒、沙悟浄といった護衛に守られて天竺まで困難な旅をし、長い旅の果てにありがたい経典を取得するというお話。皆さん、子供のころから一度は耳にしたことがあるでしょう。
大般若経の存在が示すのは、「西遊記」は完全な虚構(フィクション)では無く、ある程度の事実を基にした物語であるということ。三蔵法師が、今から約1300年前に困難な旅の末に天竺から持ち帰ったありがたい経典が、今この日本に伝わり残っている。そして、今なお強い信仰が寄せられている。そう考えると、心の中に何か響いてくるものがありませんか?
