1.KS(キングセイコー)・GS(グランドセイコー)の簡単な解説
その昔、クォーツ時計が世に出まわる寸前に国産腕時計の頂点に立っていたのが、GSことグランドセイコー。 GSは非常に高価だったため、機械そのものはGSに準じながらも精度調整を簡略化するなどしてGSに次ぐ高級腕時計とされたのが、KSことキングセイコー。 機械式腕時計は、クォーツ全盛になってからは殆ど進歩していません。機械式全盛期に作られたGS・KSは、現行のロレックス・オメガと比較しても、決して引けを取るものではありません。適切に調整されれば、むしろ精度では上回ってしまうほどの逸品・・・と個人的には思っています。 |
服部セイコーの会社組織は良く知りませんが、工場が諏訪と亀戸に分かれていて、それぞれが別会社だったのは有名?です。 初代GSは諏訪精工舎(現セイコーエプソン)、初代KSは亀戸の第二精工舎(現セイコー電子工業)がそれぞれ製品化しています。後には、両舎ともGS・KS入り乱れて製造するようになりましたが、諏訪はGS、亀戸はKSの方に思い入れが強かったようです。 |
自動巻が高級品で、手巻は普及品・・・なんてことはありません。GS・KSともに手巻・自動巻の両方がラインナップされています。 よく自動巻の方が便利と言われますが、初期の自動巻や廉価品では手巻機能が付いていないので、常用していないと十分巻けているかどうか確認できず、知らぬ間に止まってしまっていることもままあります。GS・KSの後期(ハイビート)の自動巻では、手巻機能もついているためこのような心配はありません。但し、巻きの感触は手巻専用のものが圧倒的に良いです。 |
ハイビートというのは、機械式時計の精度を上げるため時計のテンプの振動数を8振動/秒以上にしている時計を指します。ロービートというのは、(ハイビート登場以降にそれ以前の標準だった)6振動以下の時計を指します。振動数の異なる時計は通常、設計からして違いますので、ロービートとハイビートは全く異なる機種となっています。 GS・KSの場合、前期は全てロービートだったのが、後期は全てハイビートの機種に切り替わっています。しかしGS・KSに限れば、ロービートの機種でも十分な精度を出すことは可能です。(それが高級品たる所以) |
45KSクロノメーター(45-8010)
SEIKOの下にクロノメーターの表記がある
他に7010ケース入りのものが存在する
56KSクロノメーター(5625-7030)
こちらもクロノメーター表記あり
56KSのクロノメータは多岐にわたり、角型ケースのものまである
クロノメーターというのは、外観だけ見れば別に普通の時計です。しかし、公式検定に合格している時計なのでので、通常のものよりも遥かに高精度に仕上げられているのです。 GSの場合、クロノメーター規格よりも更に厳密なGS規格というものがあって、それに基づき全数検定を行っているため、公式なクロノメーターというものはありません。文字盤にクロノメーターの記載があっても(57GSの初期型等)まあ飾りみたいなもの(非公認の社内検定)です。 KSの場合、GS規格のようなものは存在しなかったため、KS上位機種としてクロノメーター規格品もありました。但し、通常のKSと機構的な差はなく(但し4420クロノメーターのみは別機構)、別ラインで高度な調整を行なうことでクロノメーター規格に合致させていたので、KSに限れば(それも現存する状態で考えれば)通常品とクロノメーターとの間には、希少価値以上の差はないといえるでしょう。 |
45GS(4522-7010)
GSとしては、やや珍しい形のケース
45KS(4502-7010)
メカ(4502=4522)、ケース(7010)とも殆ど同一
GS最後の機種は自動巻が56GS、手巻が45GSでしたが、これらは同時期の56KS、45KSと全く同じ機械が使われています。強いて違いを挙げれば、機械(ムーブメント)に刻印された機種番号刻印が異なるのと、出荷前調整の念入りさ位のものでしょう。 また、石数・振動数を下げて更に下位機種にまで採用されたムーブメントもありますし(56LM、52LMスペシャルなど)、もちろんGS専用・KS専用のムーブメントもあります。(初代GS・44KSなど) |
例えば、一口に56KS(56GSも同様)といっても、日付・曜日(付き)モデル、日付のみのモデル、日付も曜日もないモデルが存在します。 これらは、外観は大きく異なりますが開発・発売時期は全く一緒、中身の部品も大半が共通で、一般的には特に区別されず単に「56KS(56GS)」と呼ばれます。 44KS・62GS以前の機種は得意でないので、45・56以降の機種について簡単に書くと ・45KS:45(=4500)、4502(日付) ・61GS:6145(日付)、6146(曜日・日付) という機種番号(裏蓋及び文字盤下部に小さく記載)になります。 4502KSと5625KSは、外観はそっくりですが中身は全く別物です。反対に5621KSと5626KSは、外観はとても同じ時計に見えませんが、中身の構造は殆ど同一です。 |