2004. 5

 子供の頃、鍛冶屋のまねが大好きで、風呂の炊き口で、レールを置き、赤熱させた鉄をカンカンやっていた。まあ、父も農機具などをやっていたので自然にまねしたというところだ。

 その前には、鉛を溶かすのが面白くて、つりの錘を買ってきては溶かして、型に流し込んで遊んでいた。テレビマンガの「サスケ」で、手裏剣を鋳造するシーンがあったが、それをリアルに覚えているくらいなので、見ながら「うんうん」とうなづいていたかも知れない。
 そのころ、鋼の炭素量によって焼きが入る入らないがあるということは知らず、何でも水で急冷すると焼きが入るものと思っていた。

筍の試し斬り

 しばらくすると、当然(?)日本刀を「たたきたい」と思うようになり、20mmくらいの鉄筋を拾ってきて、たたいた。なかなか刃の形にならず苦労したが、グラインダで削って何とかカタナを作った。刃渡りは60cmくらい。サヤはよう作らなんだが、柄はつけて振れるようにした。

 刃に光沢がなく背に鉄筋の凸凸が残っていて雰囲気が今ひとつだったが、とにかくできた。で、何か切りたい。そこらのモノを切ってみた。切れんこともないが、ナタのような切れ味がない。竹も切ってみたが、刃がたたない。刃がひどく曲がってしまう。
 もう一度、焼いてタタいて見る。研ぐ前に強度を試すが、やはり曲がりそうだ。これ以上のことはムリっぽい。何度もやっていると、風呂はチンチンに沸いてしまったりした。

 時、折りしも山萌える季節。タケノコがある。近くのヤブでやるとヤバイので、遠くのあちこちのヤブで、試し切りをした。延びた筍なら切れた。まあまあのカイカン。 竹を育てていた方にはご迷惑をおかけした・・だろうな。
 見つかりはしなかったものの、田舎の子供だからナタの切れ味も知っており、刀の出来にまったく満足できず、(刀づくりは)それっきりになった。

 その後、工学系の道に進むことになったのは必然だったかも知れない。しかし、知るほどに日本刀というモノの機能はすごく、工夫を極められたものであり、その上に芸術性をも極限まで追求していることが明らかになる。

 もちろん今では、ちょっとタタいてみようと思わない・・。 斬ってみたいけど・・・。