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第12話 名前のない喫茶店

話は25年くらい前にさかのぼる。
僕達が高校生だった頃、京都の日吉ケ丘高校美術コースの友達と
いつも一緒に遊んでいた。

音楽の嗜好はもちろんハードロック!その音楽は僕達を魅了していた。
昔のハードロックのほとんどがブルーズベースで
退屈な3コードを馬鹿デカイ音で表現すれば
誰でもハードロッカーになれた。
何も難しい事はしなくていい。
とにかくファズを効かせてギターをかき鳴らせばいい。

僕達の間での流行はロックと変わった喫茶店を見つける事。
そんな時、友達からすごく変わった喫茶店があることを教えられた。

その喫茶店は
店の中で話をしたら叱られるらしい。
その喫茶店は小学校の椅子が並べられているらしい。
その喫茶店は食べ物を持込しても無視してるらしい。
その喫茶店の中の空気はアメリカ南部の空気らしい。
その喫茶店に来るお客はみんな音楽を愛してるらしい。
その喫茶店に来る男はみんな長髪でハンパじゃないらしい。
その喫茶店に来る女はみんなジャニスを意識したファッションに身をくるんでいるらしい。


胸がときめいた。
絶対行ってみたいと思った。
そして、その日が来た。
場所は京都市中京区堺町錦小路上ル
とある小さなビルの2階にその店はあった。
ジュラルミンの扉だ。
その扉を開けた・・・・

薄暗い店内に目が慣れ、息をするとアメリカ南部があった。

ロバートジョンソンがそこにいた。

アコースティックなブルーズが静かに流れていた。

サングラスをかけ、髪の毛が腰まである男のウエイターが近づいて来た。
メニューを無言でわたされ、コーラを頼んだ。
その男は始終無言だった。
僕は始終ドキドキしていた。
するとリトルフィートがやって来た。
「18歳」
初めてのブルーズとアメリカ南部との出会いだった。
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