不動明王

五大明王の中央に座している明王が、主尊である「不動明王」です。
広く「お不動さま」と呼び親しまれている仏様で、古来より多くの人々の信仰を集めている、日本における最も有名な仏様のうちの一尊です。

不動明王


不動明王のサンスクリット名は、「動かざる者」を意味する「Acalanatha(アチャラナータ)」。つまり、菩提心(仏道を求める心)がゆるぎなく堅固であることを意味しているとされており、インドにおけるヒンドゥー教の三神の一、シヴァ神の異名の一つでもあります。また、無動尊や不動威怒明王、不動使者という別称もあります。

明王のサンスクリット名は、「明咒の王」を意味する「Vidyaraja(ヴィドヤーラージャ)」で、この「明咒」とは、諸仏諸尊の威力がこもる唱句、すなわちご真言のことであります。
ご真言を唱えれば智慧の光によって迷いや苦悩の暗闇が破られる。そのご真言(明咒)の威力が強力である仏様が明王であり、明王の中でも最も勝れている尊が不動明王であるとされております。

不動明王は、大日如来が人々の悪心を調伏するために忿怒の姿で現れたものであり、如来の命を受け、仏法を障害するものに対し怒りをもって対決する使者(教令輪身といいます)であるとされています。
また、その威厳に満ちた容貌から、全ての災魔を屈服させると言われ、さらに難行苦行に立ち向かう修行者を守護すると信仰を集めています。

お姿の特徴を述べていきますと、不動明王は奇岩もしくは瑟瑟座に乗り(独尊の場合は立像も多くみますが、五大明王の中央に位置する場合は坐像が多いようです)、火焔の光背を背負います。この火焔は迦樓羅炎(かるらえん)と呼ばれるもので、不動明王が火焔の中に身を置き、自らを火焔そのものにすることによってあらゆる煩悩を焼き尽くすという凄まじい姿勢を示しております(火生三昧といいます)。

また、一面二臂のお姿が多く、右手に智剣(大慧刀ともいいます)を、左手に羂索を持ち、童子の形をとります。これは、右手の剣で三毒(貪瞋癡)の悪障を断じ、左手の索であらゆる衆生を引き寄せ正道に導くことを表しているそうです。

不動明王御尊顔


尊顔は、右目を開き左目を細く閉じる天地眼(てんちがん)で、唇を噛み牙を突き出す激しい怒りの表情をされています。また、髪を七結の弁髪に編み、左肩に垂らしています。これは、奴僕の形を意味しており、まさしく大日如来の下僕として人々の救済に没頭することを示しております。
また、頭頂の蓮華は、不動明王の忿怒形の内側に秘められた慈悲の心を表しているそうです。

不動明王は、五大明王・八大明王(五大明王に無能勝・大輪・歩擲明王が加わった形)の主尊であり、独尊で祀られるほかに矜迦羅・制タ迦の二童子を加えた三尊の形式も多くみられます。

当山常福寺の不動明王は、一面二臂の坐像で像高171.6cm。カヤ材の一木造。平安期の作らしく、現在は五体あわせて国指定の重要文化財となっております。


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