私たちの住んでいる地球の約七割が水でできています。水の惑星と呼ばれるゆえんです。私たち人間の体も約七割が水でできています。また、地球の水の平均塩分は、人間の体の塩分と同じ0.8%です。
地球上の生き物で、これほど地球の組成に近いのは人間だけだといわれています。これは、人間が水を中心に、自然とともに共生しながら生きていく大切さを教えてくれていると共に、自然の摂理、不可思議なものを感じざるをえません。
 古来より伊賀上野市は、度重なる干ばつや災害はあったものの、全国的に見て比較的水に恵まれ、山紫水明、風光明媚な災害の少ない、住みやすい土地であります。
伊賀、上野市内の河川は、すべて淀川水系で、一級支川木津川と二級支川柘植川、服部川、大戸川、住古川、久米川、岩根川、西出川、宮谷川、東高倉川、浅子川、平野川、矢田川、ヒジキ川、はった川、予野川、矢谷川、高山川、七本木川など33河川。それに、準用河川土橋川、高砂川など66の河川、あわせて99の川が網の目のように流れています。

 伊賀上野盆地は扇状地ですから、西に向かって縦横に河川や地下水が発達しています。
上野盆地は1200年ほど前までは、高野まき、欅、ヒノキの欝蒼とした森林で、私たちの祖先は、これらの大木を伐採し一級支川木津川にいかだを流し、次々と笠置を通って木津まで材木を運びました。字のとおり木津は木材の集積基地でした。奈良の神社仏閣建築の多くが、伊賀上野の木材を使用しているとの環境保全市民会議の武田恵世さんの説明です。
私も調査したところ、その通りであることが分りました。
川の水量は年間を通して豊かで、あゆ、こい、フナ、ドジョウ、もろこ、うなぎ、スッポン、たいわんドジョウ(雷魚)、ゴリ、すなほり、ぎゅうぎゅう(ギーギー)、なまず、めだか、八目うなぎ、はす(ブラックバスでない)などあらゆる魚がいました。
 私の家のそばを流れる久米川でも、水深が深いところで2m近くあり、泳いだり、夕方暗くなるまで鯉や鮒やなまずやもろこを釣ったものです。
しかし、今の川をご覧ください。水の量が四季を問わず非常に少なく、私達の飲み水に使う地下水源も際立って少なくなっています。

これらの原因は、もちろんコンクリートライニングと呼ばれる水路や、河川の構造上の問題もありますが、山林と水田の保水力の低下と地下水をくみ上げる技術の進歩で、地下水をくみ上げすぎ、といったことが大きな要素となっていると思います。道路や空き地も舗装され、降った雨が急激に流れてしまうということもあります。広葉樹林をもっと植林すること、地下水の取水制限、調整池や防災貯水池の整備、基盤整備(ほ場整備)での水の活用や再利用を工夫すること、だと思います。比自岐で行われている方法は、注目されるべきだと思います。

 河川の水質も一向に改善されないどころか、ますます悪化しています。
平成六年、久米川流域生活排水対策重点地域に指定され、汚名をかぶったまま、関係地区の皆さんが懸命な努力のおかげで、久米川に放流されている緑ヶ丘排水を除けば、芝床橋で5〜6ppmです。
ところが、二級支川大戸川、住古川、久米川、岩根川の水質は、上野市河川水質調査報告書によりますと、BOD数値で大戸川72ppm、住古川32ppm、久米川に放流されている緑ヶ丘排水で32ppmと、魚が住める限界の3〜5ppmの10倍から15倍の汚れです。大戸川ではさいこうで120ppmと言いますから、ナマ同然です。リンや窒素、トリハロメタン、環境ホルモンも緑ヶ丘排水、大戸川、住古川、矢谷川が驚くべき高い数値を記録し、その汚濁原因は上野市の生活排水です。
これらの水が、木津川、淀川を流れ、1660万人の近畿の人達の飲み水に使われています。

 この上野市河川水質調査報告書は上野市が作成したものではありません。
大阪にある環境監視研究所「淀川水系の水質を調べる会」の人達が、三重県環境保全事業団環境創造活動助成事業のもとに、調査されました。
大阪や神戸の人達が、匂いのする飲水の源流を遡って、たどり着いたのが上野市であった、ということで、名張の川より、はるかに伊賀上野の川が汚れているかを調査、証明したわけです。
他市の人達がここまで熱心に行動しているのに、私達は傍観してはいられません。
上野市として、大きな責任があると思いますが、まず市長のご所見をお聞かせいただきます。

 河川汚濁の原因は、生活廃水系、産業排水系、産業廃棄物処理場廃液、農地やゴルフ場の農薬、化学肥料、土壌改良剤などいろんな要因が絡み合っていますが、一般的に生活廃水系が70%を占めるといわれています。上野市の生活排水が、木津川上流域の水質に大きな影響を及ぼしているかがよくわかります。特に、北東住宅地区から北部地域を流れる矢谷川、市役所から北側の国163号線沿いのレストランや、商店、家庭の排水が流れ込む大戸川。旧市街地ほとんどの排水が流入する往古川。市街地東部の住宅地の生活排水が流入する緑ケ丘排水。開畑地区から西部地域を流れる岩根川の水質が非常に悪いことが分ります。これらは緑ケ丘排水を除いて木津川支川なんです。
 有機物汚濁の代表的な指標であるBODで、大戸川72mg/L, 往古川32mg/L, 緑ケ丘排水32mg/Lとなっています。(表1を見せる)
この値は合併浄化槽の排水基準である20mg/Lを遥かに超えています。また、生活雑排水中の窒素やリンは大阪湾や瀬戸内海の赤潮を発生させます。また、チッソからアンモニアが発生し鼻を突く悪臭の原因となります。(表2を見せる)緑ケ丘排水が最も高くて、往古川、矢谷川、大戸川が次に続きます。
 緑ケ丘排水がいかに臭いか、県が流下部に炭をおいてくれたりしますが、何の効果があろうか、誠に疑問です。周辺の人は何十年も、臭いにおいの中で生活する、それも自分の排水ではなく、上流の人達が排出する排水なんです。お分りいただけますか。
上野市の旧市街地には大きな工場はなく、また大きな団地もなくコミュニテイープラントと呼ばれる大型合併浄化槽もありません。
明治時代に雨の水と生活排水を開渠で排水する、というその当時では画期的な土木工事でした。
今は「臭いものに蓋をする」暗渠になりましたが、そのため公共下水道事業が遅れ、蚊やハエの発生源とともに、旧市街地の生活排水で木津川を汚しているのです。公共下水道は終末処理場をつくり、それからパイプラインで各家庭に繋いでいかなければならず、20年以上という長期間の土木工事と、1500億にのぼる、ばく大な事業費が必要になります。25年前に取り組んでおくべきだったと思います。
さて、新聞報道によりますと、河川汚濁の大きな原因となっている家庭排水の処理方法として、厚生省は本年度から浄化槽の推進に本格的に乗り出す。建設農水両省との協議でこのほど浄化槽と下水道の経済性を比較するマニュアルが作成され、下水道よりも浄化槽を導入する方が効率的経済的な地域が多いとし、浄化槽の耐用年数を三十年と認定。下水道を引くまでの一時的、補完的な設備という印象が払しょくされ経済性が裏付けされた。
また、厚生省は本年度予算で浄化槽設置への補助金のを大幅増額を決定し下水道を一辺倒だった計画を見直す自治体も出てきた。厚生省は本年度予算の概算要求で浄化槽設置事業の国庫補助金に昨年度予算の一・五倍を超える253億円を計上し各都道府県が策定する汚水処理施設構想もマニュアルに基づいて見直すよう求め浄化槽の普及に弾みをつけたい考えである。

 [下水道より浄化槽がお得。厚生省推進で本腰。]マスコミが下水処理に関してこのような大きな扱いをした背景の一つは1998年末現在で供用開始中の公共下水道は全国に1206ありますが、黒字になっている自治体は東京、大阪など大都市などわずか1%の十四カ所だけで、残り99%の1100の自治体が赤字で、下水道の赤字が自治体財政を圧迫していること。
二つ目として、公共下水道事業を推進している途中で赤字に気がついても軌道修正が困難であること。三つ目に、汚水を処理する方法には、パイプラインを使う、すなわち集合処理方法として、公共下水道のほかに特定環境保全公共下水道や農業集落排水、漁業集落排水、林業集落排水、簡易廃水処理、小規模集合処理、コミュニテイープラントなどがあります。一方パイプラインを使わずに、自前で処理するすなわち、発生源処理には特定地域生活排水処理、個別排水処理、合併処理浄化槽などをこの方法があることを知らないでいること。

 公共下水道の終末処理場すら未定の段階です。いつまでも待っていられません。それよりも、短い期間で一定の水質改善ができることや、合併浄化槽の性能が飛躍的に向上したことなど、合併浄化槽の積極的な補助や、特定地域生活排水処理事業など、集中大型合併浄化槽の導入などを推進すべきだと思います。自治省今の総務省は、昨年、全国の自治体に対し下水道事業が地方財政を圧迫している実体をファクスで知らせました。「下水道を始めるのはとても簡単です。でもその後が大変だということに気がつかないといけません。」と新聞で報じています。鹿児島県志布志町は相談をした下水道事業団の関係者から、町の出費は少しで済みますから」といわれた。ところが事業が始まって数年たつと、起債の元利償還が重くのしかかってきます.国からの地方交付税でその半分は面倒をみてもらえるとはいえ、10年20年先まで国の交付金を当てにできるでしょうか。結果的には大きな負担となってきます。さらに問題なのは、下水道の管が家の前まで引かれても敷地内の配管は自己負担になり、高齢者や一人住まいが進む町部では、数十万円の出費に、抵抗感のある住民も少なくなく、人口の目減りとあいまって、自治体の予測した通りの使用料の徴収を難しくしています。計画から供用開始までの工事期間が長いことも大きな難点です。終末処理場予定地の住民同意を取り付けるのに時間がかかることも、大きな問題です。
 鹿児島県志布志町では、下水道に変えて、昨年度から浄化槽の設置補助に積極的に取り組み始めた。10年で3800人分約1450基の設置を目標に総事業費は6億円だ。下水道では2600人分の一期工事だけで60億円だから、10分の1の費用で下水道を上回る人口の汚水処理が可能である。

 秋田県二ツ井町は、事業を始める前に住民に下水道か浄化槽かを尋ねた。その際双方の財政比較を明示した。40年間で12100人3650世帯の汚水処理をする場合、下水道の総事業費を204億円に対し、浄化槽は約51億円。町単独の支出は47億円と23億円の差がある。一方住民の個人負担は下水道が月3800円、浄化槽は月4300円で、町財政を圧迫するより住民は少々の痛みを分かち合うことを選んだ。とあります。

 これを上野市に当てはめた場合、上野市の計画処理人口は48000人、16000世帯ですから、下水道の総事業費は約800億円、浄化槽は200億円程度です。上野市は、下水道の総事業費を1450億円と見積もっています。

 三重県の河川の中で、久米川と櫛田川がワースト1,2を争っていましたが、櫛田川周辺の市町村は、初めは三重県の下水道計画により住宅の密集した二つと地区に公共下水道を、住宅が少ない二つの地区に合併処理浄化槽を、その他の13地区に農業集落排水施設を整備する計画で130億円と見込んででいました。しかし、特定地域生活排水処理事業を導入し、30億円でできたそうで、100億円の節約ができたそうです。

 一方、浄化槽では10日から二週間ほどで整備できるのがメリットで、また浄化槽の設置は、資格さえあれば中小業者でも可能で、地元業者の育成にもつながるとされています。
厚生省はこうした点に配慮して、
特定地域生活廃水処理事業を自治体に進めています。この事業は個人が合併浄化槽を設置し、その費用に国などが補助金を出すのではなく、自治体が一件ごとに敷地の地下を無償で借り受け、合併浄化槽を埋設。その後の管理も各家庭からの委託料で、自治体が行うシステムです。個人で設置する場合は、設置費用の約六割が住民の負担になるが、この事業だと国庫補助が増額されるために、一割で済むというメリットがあり、全国で五十を超える自治体で採用されています。もう少し補足すれば、この事業は市町村が公営企業として、高度処理型を含めた合併処理浄化槽を、毎年20戸以上、数戸の共同設置も含めて、戸別に整備し、維持管理を行うもので、個人設置の合併処理浄化槽設置整備事業に比べ、国の補助が優先され、個人負担が少なくなると共に、良好な放流水質10ppmが継続的に確保されるというものです。補助割合は、窒素やリンも排除する、高度処理型合併処理浄化槽で整備する場合、環境省が設置費用の3分の1を補助し、なお且つ、起債の償還額から、交付税措置分を差し引いた額の半分が県費補助されます。11人槽で最高200万円から、50人槽では600万円の補助があると、厚生省、合併処理浄化槽設置整備事業費国庫補助金交付要綱に記載されています。あくまでも、この補助は個人でなく自治体です。
 なお、この制度は過疎地域と振興山村と生活排水対策重点地域に適応されます。水質汚濁防止法に規定する、生活排水対策重点地域が市街地東部から南部全域、すなわち緑ヶ丘から、田端、池町、茅町、愛宕町から南側久米、四十九にいたる広い範囲が指定されています。活用するべきだと思います。

 同時に、往古川、矢谷川、大戸川などをかかえる、市街地全域が生活排水対策重点地域に指定されそうだと聞きます。
恥ずかしいことですが、そうなれば市街地全域を有利な整備事業にしては、と思いますがいかがですか。
 このほかにも、戸別排水処理施設整備事業というものがあり、上野市の場合、公共下水道事業推進が、遅れたことがよかったとも言える、さまざまな有利な整備事業があります。

 市内の合併浄化槽設置数は、およそ3000基弱で、平成9年をピークに減少しています。
これは、補助率が下がったことと、市街地は設置場所に苦労しているからだ、と思います。条件が合えば、道路の下にも浄化槽が設置できるとのことですが、合併浄化槽の補助金の拡大や補助枠の拡大を図るべきだと思います。

 また、大戸川下流に有機物を除去し、リンや窒素を吸収する水質浄化のための施設いわゆる接触酸化型植生浄化施設が建設される予定で、国土交通省や県、市、あるいは上野市環境保全市民会議と市民が協力して運営に取り組むことになり、誠に喜ばしいことです、この事業を、往古川、岩根川、矢谷川にも導入するべきだと思います。