異人館(上・下)

白石 一郎

講談社

 長崎にある「グラバー園」の主人であったトマス・グラバーの一代記である。

 この本を閉じている間は登場人物たちが本の中で止まっていて、開いたら動き出し、僕は、その時代をのぞいているような感じがした。本の中で、時代が動いていた。こんな風に小説を書ける人はすごいと思った。

 それと、この本のもう一つの魅力は、外国人であるグラバーや居留民たちから見た幕末の日本が詳しく描かれていることだった。薩摩藩主島津久光氏の大名行列に割り込んだとしてイギリス人が殺された「生麦事件」もイギリス人など居留民からの目からも書かれていた。資料を集め、丹念に読み、書かれたものという印象を強く受けた。

 この本を読みながら、日本はアジアの東の端にあることを改めて考えた。日本人はどこからきたのだろう?日本人の性格の特徴とは?外国人から見た日本とは、日本人とは。この本で知る限り、中国の人とは、性格が違うらしい。商人としてやってきたグラバーの苦労を読みながら、日常の冒険心ということも考えた。当時とは時代が違うが、人が生きていく上での、発するパワーは学びたい。

 

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