「外国語学習の科学−第二言語習得論とは何か」 白井恭弘 岩波新書
なぜ、中学校・高校と英語を勉強してきたのに、読み書き会話ができないのか、という疑問の答えを求めて、読んだ。
【記録したいところ】
・「言語間の距離」の話の中で、「例えば、津軽弁しか話さない人と鹿児島弁しか話さない人との間では、意思疎通は難しいですが、スペイン語しか話さない人とポルトガル語しか話さない人の間の理解は可能です。」???
・バスケットボール部の生徒がハンドボール部の試合にかり出されるが、その逆はないとのこと。理由は、ハンドボールはボールを持って三歩まで歩けるが、バスケットボールは二歩しか歩けないからとのこと。つまり、自分の慣れたことをやると、それでルール違反になってしまう。これが「負の転移」という。
・母語と第二言語の距離が近いほど(1)転移が起こりやすく、(2)転移は正の転移となり、全体として学習が容易になるが、(3)母語と第二言語が違っている部分については間違いがなくなりにくい。
・学習者の外国語能力がまだ不十分なうちに無理に話させると、結局学習者は母語に頼って、その母語の文法に適当に第二言語の語彙をくっつけて、変な外国語をしゃべる、という危険性があります。
・(lとrの発音について)友人が運転する車のナビゲーターをしていたところ、突然右に曲がったので、理由を聞くと、今、right(右)って言ったじゃないか、というのです。こっちはlight(信号)と言ったつもりだったのに。
・じつは、日本語は誰が何をした、ということをはっきり表さない言語として知られています。
・言語習得と年齢の関係に関して、いわゆる環境的な要因の方が重要で、脳による生得的な制約のような要素はさほど重要でない可能性もある。
・乳幼児は、世界の言語に存在するすべての音を区別することができます。例えば、日本人の赤ちゃんは、生後数か月はlとrの区別ができますが、その能力は生後六か月から一歳くらいまでの間に急速に低下してしまいます。これは、母語である日本語において区別されていない音の区別を無視することを学習してしまうからです。
・外国語学習適正テストの一つMLATは、四つの能力を測るように作成されています。1.音に対する敏感さ 2.文法に関する敏感さ 3.意味と言語形式との関連パターンを見つけだす能力 4.丸暗記する能力
・適性の四つの要因を 1.音声認識能力 2.言語分析能力 3.記憶 の三つの要素としてまとめている。(ロンドン大学のピーター・スキーアン)
・日本人が英語ができない理由の一つは、言語間の距離が遠いこと、それと動機づけの弱さがある。
・言語能力(音声・単語・文法)、談話能力、社会言語能力を合わせて、コミュニケーション能力という。
・第一言語習得はふつう成功するのに対して、(大人の)第二言語習得はふつう失敗に終わる。
・授業の70%は聞く活動、20%は話す活動、読み書きは10%が良い結果を生んだ。
・アウトプットとして、頭のリハーサルも有効
・会話のためには「予測文法」が必要。この能力は、大量の英文を聞いたり読んだりして理解しているうちに身についてきます。
・いわゆる二重目的語構文(SVOO)は、「間接目的語」が「直接目的語」を(何らかの形で)所有することになるという意味的制限がある、とのこと。
(1)Open me a beer. (2)Open me the door. (1)は正しく、(2)は誤り
・リスニングは、聞いても20%しかわからないような教材を聞くより、80%以上わかる教材を何度も聞いた方が効果があります。
・アウトプット(話すこと・書くこと)は、毎日少しでもやるべきです。
・完璧な発音を目指しても、大人の学習者の場合、完璧な発音を身につけるのはほぼ無理。しかし、最初から目標を下げるとそれさえできないので、努力するが、がっかりしない。
【読んで自分を変えたいこと】
・(大人の)第二言語習得はふつう失敗に終わるので、無理をせず、リスニングとアウトプットを毎日少しずつやること。