「こどもを野に放て!」 養老猛司 中村桂子 池澤夏樹 (編者)春山慶彦

集英社

私の好きな方たちとの対談集。春山さんだけ知りませんでした。

【養老猛司さんとの対談で】

1.(春山)地域で受け継がれてきた自然観や祈りが具体的な行為として再興し、人々の生活に組み込まれて行けば、風景・風土はより豊かに、美しくなっていくのではないか。

2.(春山)日本語の「自然」は、里山のような、人の手がある程度入った自然なんです。

3.(養老)そうやって生きのびてきたのが、今、目の前にいる虫たちです。

4.貝原益軒の幸福論では、自分が幸せになると、周りが幸せになり、社会もよくなる。そうすることで環境も豊かになっていく。これを「徳を積む」として、生き方を説いている。

5.学校の教室では、基本、教師と生徒が、一体多で対峙していますね。でも畠山さんとお孫さんは、自然に対して一緒に向き合い、互いに感じたことや喜びを共有し合っている。向き合い方が全く違います。

【中村桂子さんとの対談で】

6.(春山)ピラミッドの頂点に人間がいるのではなく、生命誌絵巻の扇形の中で今、地球上に生きているすべての生き物と同じところにいる。ということですね。

7.(中村)SDGsには「誰一人取り残さない」という言葉があるでしょう。私はこれが好きではありません。まるで神様がおっしゃってるみたい。

【池澤夏樹さんとの対談で】

8.(池澤)アラスカの原野がそうであるように、自然というのは実はとても単調で退屈なもので、ほとんど何も起こらないんですね。

9.(池澤)自然は恩恵であると同時に、生きることに対する制約でもある。そんな当たり前のことを忘れてしまった人間は、生きることをなめていて、本来受け取るべきリスクをサボっているから、それに対応する力や知恵がない。そこが、自然の中でインチキせずに生きる力を身につけている動物との違いです。

10.(春山)現代における最良の知恵は、「つくる」や「足す」ことよりも、「手放す」や「足るを知る」のほうにこそあるのではないかと思います。

11.(春山)一二〇〇キロの巡礼地を六〇日かけて歩きました。――「地球の外に出ることではなく、高い山に登ることで㎥なく、自分が経っている足元や住んでいる場所を宇宙そのものだと思い、足元を掘ることこそ、二十一世紀の冒険なんだ」と気づきました。

12.(春山)山を歩くという営みは、現代においても最先端の身体的行為なわけです。

13.(春山)身体知が発揮できるくらいの小さな場所に自分たちのくらしを置く。

【読んで自分を変えたいこと】

・生物の進化の頂点に人間がいるというおごりは捨てたい。

・体を動かすことで得られる情報をたくさん蓄えたい。