「花散る里の病棟」  帚木蓬生  新潮社

三代にわたって、その時代時代を医師としてどう過ごし、その時代にかかわってきたのかが書かれていました。特に印象に残ったのは、戦時中、軍医として出征した戦地での様子です。転戦する中で、ついてこれない重症の兵士に、消毒薬のクレゾールの希釈液1.2CCを注射し死亡させることしかできなかったことや、従軍看護婦だった方が語った、戦後、引き上げてきた時に関わった堕胎手術の話など、印象に残りました。全体として、医師としての日常の生活のエピソードを交えながら、時代とのかかわりを三代にわたる医師の目から丁寧に書かれ圧巻でした。

【読んで自分を変えたいこと】

医師という職業を通して、時代にほんろうされる市民の一人として、時代を記録するという作業をこの作家はされました。私が今、生活している時代も、今の時代の制約と発展の中だし、その流れの中に私は「いる」ということを考えます。

改めて、かつての戦争は、どうして止められなかったのか、これからの戦争は、どうしたら止められるのか、一市民として考え、行動したいと思います。