誰かお願いします−06.07.30

「誰かお願いします」---声が聞こえた。

JR奈良駅のホームから階段を上がったところだった。白い杖を持った年配の男性が立っておられた。

「出口まで連れて行ってください」その男性は、もう一度、声をあげた。

僕は、そばに行って、「出口まで行きます。腕を持ってください」と話した。

一緒に階段を降りた。慣れてはいないけれど、難しくない、と思っていた。けれども、「もうすぐ、階段が終わります」というタイミングがわからなかった。

和歌山から一人で全障研大会に来られたとのこと。一緒にバスに乗り、僕は、あいさつをして途中で降りた。

「誰かお願いします」

こうして、あの人は一人で移動されている。

僕は、自分から声をかけるのをためらうことが多い。

今も、耳に残っている。

「誰かお願いします」