単元T 経済と中小企業のレポートテーマ 「90年代不況」の特徴と今後の展望について

                                

90年代にはいったとたんに、バブル経済が崩壊し、90年代不況が始ま った。

  1. 戦後最大級といわれる現在の不況の原因

この90年代不況の原因は何か。
 70年代・80年代の資本主義の構造的危機が進行する中で、円高不況 対策として政府は更に金融自由化・国際化の名目で投機活動をおしすすめ た。この政府の政策に後押しをされた、大銀行・証券や大企業がもうけた 莫大な金(カネ)を不動産や株式の投機にまわし、これによって生じたバ ブル経済の破綻が90年代不況の原因にあげられる。
 つまり、主要産業における過剰生産と円高ショック、そしてバブル崩壊 とその後遺症が重なったことが現在の不況の原因である。

  1. 2.これまでの不況との違い  

70年代・80年代の不況との違いは、日本経済の発展をささえてきた 経済環境の変化にある。一つは、右肩上がりの経済成長でなくなったこと。 二つ目は、円安から円高定着へ移ったこと。三つ目は、相対的低人件費と いう大量生産システムを支えていた条件がなくなったことである。
   もう少し、詳しく見てみると、70年代の不況は
@60年代の高度成長 の結果、インフレーション発生、過剰設備などが表面化し、同時に公害発 生など高度成長持続が困難になってきたこと。
A1973年の石油危機に より、それまでの低コストのエネルギー資源収奪に依存していた高度成長 が困難になったこと。
Bドル支配体制がゆらぎ、変動相場制があらわれ、 金融自由化の進むなかで投機活動が活発化した。
C低成長下で景気回復を めざすために財政赤字を大きくさせた。
D不況の長期化で失業者が増大し、 貧富の格差が大きくなってきた。
という特徴があった。
 この70年代の経済危機が進む中で、政府は国民経済の抜本的改善に取 り組まず、80年代には、更に財政赤字を増大させながら、国民生活を置 き去りにするだけでなく、犠牲にしながら、金融自由化のもと大銀行・証 券、大企業の投機活動が独走する形でバブル経済を生じさせた。
このように、90年代の不況は、70年代の過剰生産・過剰設備(もの) と80年代の金融不安(かね)からくる不況をより深刻にさせながら複合 した形であらわれてきているのが特徴である。

  1. 3.90年代不況はどのような役割を担って登場したのか。

 しかしながら、90年代不況は資本主義経済の構造的危機の解決策を提 示してあらわれてきているといえる。(問題はその解決の道筋とともに現 れる!。)
経済環境が90年代に入り大きく変わったもとで、その中でも 大企業の利潤とアメリカの利益を守る政策を優先させることで、日本経済 は深刻な90年代不況に陥っているといえる。
これまでは、世界の極端な 不均等発展の中で、また、その中での第二次世界大戦後の相対的アメリカ 経済の強さによって、日本経済はその矛盾の解決を先送りしてきた。しか し、90年代不況は、大企業に対する民主的規制が不可欠であることを国 民に知らせていると思われる。
経済は誰の利益のためにあるのかを考えざ るをえなくなっているのが90年代不況に苦しむ国民の状況ではないだ ろうか。

  1. 4.不況打開の方向

 経済が大企業とアメリカの利益のためにあるのではなく、国民の生活を 豊かにするためにあるとするなら、政府が大企業の利益を守るためにおこ なっている税制や金融上の優遇措置・政策を国民生活の向上に結びつく経 済政策に転換させ、大企業に対する民主的規制をあわせて実施することが 必要である。
大手ゼネコンに公共事業を任せるのではなく生活環境優先の 公共投資を実施し、技術指導も含めた中小企業への財政援助を国・県・市 町村がおこなうことが日本経済をすそ野から立て直す処方箋である。
 更に、雇用を確保し労働条件を改善する法的措置も強化し、安心して働 ける環境が必要である。また、医療・福祉を公的に保障することも個人消 費を伸ばし、経済を活性化させる上で、不可欠である。
 このような政府へ の転換を、国民の多数の合意により進めると同時に、 私たち自身、消費者や利用者に受け入れられる物及びサービスの提供にまい進しな ければならない。