田中 泯氏が出演したテレビ(10月3日)を見て思ったこと

 

田中氏は「踊りは舞台で出てくるもの」という意味のことを言われた。私たちの感覚から言えば、普段の練習の成果が本番で出てくると思うのだが、舞台で新しい踊りが生まれるというのだ。どういうことだろうか。もちろん、舞台ではテーマを持ち、練習の成果が現れるのは間違いないだろう。何も用意のない舞台では、踊れない。とすれば、練習の成果を披露するだけではないということだろう。

観客がいて舞台は成立する。その場を観客と共有するなかで、新たな芸術が生まれるのだろう。

泯氏の踊りには、照れがない。なぜだろう。見ている側に立って踊ってくれているような安心感がある。僕はすべてを出している、どうぞ、自由に感じてくださいというメッセージが伝わる。自分の中で彼が踊ってくれているような気持ちになる。彼は僕なのだという錯覚だ。錯覚もひとつの芸術だと思う。LIVEとは、そういうものだろう。

さて、私の仕事はどうだろう。面接相談と問題解決の仕事に携わっている。自立支援が私のテーマだ。その人にとっての幸福の自己実現だ。練習とは、さまざまな引き出しを持つことである。知識であり、感覚であり、表現である。そして、安心感を持っていただくことがテーマでもある。

泯の踊りに引き寄せすぎだが、私は、泯氏の舞台と私たちの仕事に共通点があるように思う。そして、人を相手にするサービス業にはすべからく共通することだと思う。芸術も相手の満足が私の幸せという世界だと思う。サービス業である。照れと欺瞞と媚があっては観る人は満足しない。誠意こそが必要なのだろう。やはり泯氏は僕にとって遠い存在である。