冬牡丹千鳥雪のほととぎす

        貞享一年(一六八四) 四十一歳の作である

 

句意

 

 雪の庭に咲く冬牡丹が見事だ。この珍しい花を眺めていると、海辺を鳴きわ

たるあの千鳥もこの世では得がたい雪中の時鳥のように思われる。

 

 「桑名本統寺にて」との前詞があり、本統寺での句会で吟じた亭主への挨拶

句である。

冬牡丹は牡丹の一種で、花の直径が十センチ前後と小さく、珍しい花とされて

いる。

主題は冬牡丹の賞美である。牡丹から時鳥を連想し、千鳥(冬)を夏随一の景

色である時鳥になぞらえて「雪中の時鳥」と作意した技巧句である。

 

句碑

桑名市 本統寺