歩行ならば杖突坂を落馬哉

        元禄六年(一六九三)五十歳の作である

 

句意

 

 徒歩の旅なら杖をついて登るほど急な杖突坂を、好きこのんで駄賃馬に乗っ

て落馬し、さんざんな目にあってしまった。

 

 

 前詞に「桑名より食はで来ぬれば」といふ日永の里より馬借りて杖突坂上る

ほど、荷鞍うち返り馬より落ちぬとある。

郷里の伊賀に向う東海道の杖突坂での出来事で、落馬の事実を地名に引っかけ

て興じた滑稽句である。

季語を入れそこなった雑(無季)の句として有名である。

 

 

四日市市采女 杖突坂