門に入れば蘇鉄に蘭の匂ひ

      元禄二年(一六八九)四十六歳の作である

 

句意

 

 山門を一歩境内に入ると、立派な蘇鉄が目をひき、高貴な蘭の匂いがほのか

に漂ってくる。あたかも蘇鉄が蘭の香りを放っているようだ。

 

 

 蘇鉄の傍らに蘭が咲いている「守栄院」での句である。

しっとりと落ち着いた、気品のある寺のたたずまいを賞した挨拶句であるが、

その「守栄院」も廃寺となって今はない。

 

 

伊勢市浦口町 法住院