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〜「誰も寝てはならぬ」〜


誰も眠ってはならない! 眠ってはならない!
あなたもそうだ、皇女さま、あなたの冷たい部屋でごらんなさい、愛と希望にふるえる星を!
しかし私の秘密は私の胸にある
私の名前は誰も知ることはできない!
そうではない、あなたの唇に私がいう 光が輝いた時!

そして私のくちづけは 沈黙の中に  あなたを私のものにする!

逃走する夜! 星は沈む 星は沈む!暁にわれは勝つ!勝つ 勝つ!



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〜「衣装をつけろ」〜


芝居をするのか!

苦悩に苛まれ、言うこともすることも どうしてよいかちっともわからない程なのに
しかし努めることが必要なんだ 

ああ、お前は男なんだろうが? お前は道化師なんだ! 
衣装をつけて、お白粉を塗る  人々は銭を払い、ここで笑いたいのだ
そしてもしもアルレッキーノが お前からコロンビーナを奪うなら、

笑え、パリアッチョ・・・・ そうなると皆、拍手大喝采だ!
苦悩と涙を滑稽に変え、 すすり泣きと悲しみを しかめっ面に変えるのだ・・・・

笑え、パリアッチョ、お前の砕けた愛情の上に!
笑え、お前の心を 苦しめる悩みを



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〜「夏の名残りのばら」〜


それはただひとつだけ残った 夏の最後のバラ
彼女の愛らしい友朋はみな消えてしまった
彼女の赤みを映えさせ、ため息をつき合うような
同じ種類の花は残ってないし、もうどんなバラも見ない

君は一人ぼっちだけど、私は残って君の茎を愛でよう
美人たちが眠っているから、君も彼女らと一緒におやすみ
彼女らは 香りも失い 庭に朽ち果てているけども



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〜「人知れぬ涙」〜


ひそかな涙が 彼女の目ににじみ出たぞ
あの陽気な娘たちを うらやんでいるように見えた
これ以上俺は何を捜そうというんだ?
俺を愛してる、そうだ、俺を愛してるぞ  わかった、わかったぞ
たちまちに、彼女の美しい心のときめきを聞くとは!
俺の吐息と彼女の吐息とが しばらくの間まざりあったのだ!
神様、死んでもいい、これ以上求めません、愛のために死んでもいい



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〜「ありふれた話」〜


それは羊飼いのいつもの話だ・・・
あわれな若者は、それを話したがり、そして眠りにおちてしまう
眠って、それを忘れてしまうのだ  

なんて羨ましい! 俺だってそんな風に眠りたいんだ  
そして眠りの中でせめて忘れたい! 俺はただ心の平和を得たいだけだ。

俺はすべてを忘れることができたらと思う
だが俺の努力は無駄だった
あの人のやさしい面影が いつも俺の眼の前に現れている
俺にはほんの束の間の平和があるだけ

何故、俺はそんなに苦しまなければならないのか?
あの人は、いつもあの人は、俺の心に語りかける
宿命の幻よ、離れてくれ! 
ああ、お前は俺にとって多くの不幸をもたらす



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〜「耳に残る君の歌声」〜


いまも耳に残っている、
椰子の葉かげにかくれて聞いた、あのやさしい、よく響く声 
まるで小鳩の歌のようだった
ああ、魅惑の夜、天にも昇る酔い心地
心そそる思い出よ、狂おしい胸の乱れ、甘い夢!
満天の星の光に いまもまだ目に残る
あたたかい日暮れの風に 長いヴェールをそっとかかげた彼女の姿
ああ、魅惑の夜



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〜「冷たい手を」〜


何て冷たい小さな手、私に暖めさせてください
捜して何になるんですか? こんな暗闇では見つかりっこありません
でも幸いなことに今晩は月夜で、
ここに、私たちのそばに月がいるのです

待ってください、お嬢さん
私はほんのひとことで自分のことをお話ししたいのです
私が誰で、何をしていて、どう生活しているかを。
よろしいでしょうか?

私は誰でしょう?私は詩人です
何をしているかって?生きているのです
私の楽しい貧乏の中で
愛の詩と歌は王侯のように惜しみなく費やしています
夢と空想と空に描くお城のお蔭で
私は百万長者の魂を持っているのです

時々私の宝箱から二人の泥棒が宝石を全部盗んでしまうのです。
美しい目という泥棒が。
たった今も、あなたと一緒に入ってきて、
私のいつもの夢、
私の美しい夢は、即座に消え失せてしまいました
しかし盗まれたことは少しも悲しくありません
なぜかって、なぜかっていえば、
そこは優しい希望の棲家になったからです!

さあこれで私のことがお判りになったのだから
あなたが話して、お願いですから話してください
あなたは誰ですか?
よかったら話していただけますか?



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〜「忘れな草」〜


燕は太陽のない寒いこの土地を離れて行った
菫の花咲く春を 
愛と幸せのある巣を捜し求めて

私のかわいい燕も行ってしまった 
くちづけもしてくれず、別れの言葉もなしに行ってしまった

忘れないでくれ僕のことを 僕の命は君あってなのだ

僕は前にも増して君を愛している 今も僕の夢には君がいる

忘れないでくれ僕のことを 僕の命は君あってなのだから

僕の胸の中にはいつも 君を迎える巣があるのだ

忘れないでくれ僕のことを  忘れないでくれ僕のことを



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〜「風に託そう私の歌」〜



風が囁く、あの夜のように 四月の風が、春の風が
風はあの夜「誓うわ」と彼女が繰返していた時に
彼女の顔を一吹き、撫でていった
ああ、恋も一時の気紛れな風か
風よ、お前が吹き抜けて行ったように、恋も去っていく

風よ、風よ、私も連れていってくれ 
共にいこう星があまた燦く大空へ 
私はそこで何の恨みを残さずに裏切りを忘れたい
風よ、風よ、私も連れていってくれ

キメラの幻のようにすっと通り過ぎて行く 四月の風よ、春の風よ
遠いどこかで今も彼女にそっと吹きかかるお前
そのお前が彼女に伝えてくれ、
彼女を愛していると 心から彼女を望んでいると
風が彼女にくちづけすると、そう思うだけで嫉妬に身が震えると

風よ、風よ、私も連れていってくれ 
私の苦しみを何もかも知るお前
そのお前が彼女に告げてくれ、彼女が好きだと
明るい星の下でなら、あるいは愛が戻るかも知れぬ
風よ、風よ、私もつれていってくれ

風があの夜のように囁いているのに何故戻ってこない
春になったというのに・・・

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〜「星は光りぬ」〜


星は輝いていた。 そして大地も香わしかった。
果樹園の戸が軋み、砂地の上に軽い足音がし、彼女がやってきた
甘い香りをただよわし、私の腕の中に崩れ落ちるように入ってきた。

ああ!甘い接吻、優しい愛撫。
はやる心を抑えている私の前で 服を脱いでその美しい姿を現したのだ!

私の愛の夢はもはや、永遠に消えてしまった。 時は去ってしまった
私は絶望の中に死んで行く!
今ほど、私は自分の命を いとおしいと思ったことはない。