U.ヘンダーソンの理論の概略

ヘンダーソンは、看護を医師の監督や指示による仕事とは区別し、「独自のもの」としてとらえ、看護の機能を以下のように著した。
看護婦の独自の機能は、「病人であれ健康人であれ各人が、健康あるいは健康の回復(あるいは平和な死)に資するような行動をするのを援助することである。その人が必要なだけの体力と意思力と知識とをもっていれば、これらの行動は他者の援助を得なくても可能であろう。この援助は、その人ができるだけ早く自立できるようにしむけるやり方で行う。」1?と述べている。そして、ヘンダーソンは看護の構成要素として14の基本的ニーズを挙げ、「対象が健康人であっても病人であっても、看護婦は衣食住に対する人間の免れえない欲望を念頭におかなければならない。」2?と述べ、看護師の役割は、患者がこれらのニーズを満たせるよう補助することであると示し、看護が人間の基本的ニーズに根ざしていることを強調している。14の基本的ニーズについては後述のとおりである。この本質的ないし独自の機能は、看護師が自らの主導において遂行でき、それに関しては看護師が最も優れているとしている。


                                戻る  TOP  次に

ヘンダーソンのメタパラダイムの4概念と解釈

人間:共通の基本的欲求を持っており、多様な生活様式や個人を取り巻く環境によって影響され変化する。二人として同じものはいず、各自はそれぞれ独自のパターンで自分の欲求を解釈する。心と身体は切り離すことは出来ない。また、社会に認められることに満足を得ることから身体的、精神的、社会的側面をもつ統合体である。健康であれば環境をコントロールすることが出来る。また、親密な間柄でもお互いを完全に理解するのは難しい。

環境:友人、家族を含めた社会的、文化的背景は基本的欲求に影響をあたえる。健康であれば環境をコントロールできる。

健康:身体的、精神的にバランスのとれた状態であり、社会的にも問題がない。その人にとっての意味のある健康、病気からの回復、平和な死へ向かって援助を受けながら自立していくこと。体力と意思力と知識を持っており、自立した状態である。
 
看護:病人であれ健康人であれ各人が、健康あるいは健康の回復(あるいは平和な死)に資するような行動をするのを援助することである。看護は基本的欲求を満たす普遍的な活動であり、患者の言葉、沈黙、表情、動作、こうしたものを絶えず分析して行われる。それは各人の常在条件などに応じてケアを変容させる創造的活動でもある。看護師は医療チームの一員として協働し、基本的看護ケアについては権威者として看護独自の働きをする。看護の役割は時代や社会、またその看護師がおかれている状況により変化する。