涅槃会奉修のご報告

毎年2月15日、常福寺においては略式の涅槃会(ねはんえ)を修めております。
平成16年に、専誉僧正400年 頼瑜僧正700年の御遠忌記念事業として修復された大きな涅槃図を荘厳して、ご詠歌の講員の皆さまと一緒に法楽とご詠歌を唱えます。

涅槃会とは、お釈迦さま(釈尊)が人として生涯を終えられたことを悼み、その遺徳を偲ぶ法要です。

涅槃とは本来、「悟りの智慧」を意味するサンスクリット語「nirvana(ニルヴァーナ)」の漢訳であり、煩悩から離れ自由となる悟りの境地のことを指します。それは、僧侶のみならず全ての仏教徒が目指すべき究極の境地とされているのですが、もう一つ、今回のようにお釈迦さまがお亡くなりになられたことも指すのです。

涅槃図


常福寺にある涅槃図は、文化十五年(1818)慶正法印代に奉納されたもので、高さ254cm、横幅126cmのたいへん大きな掛軸です。
そこには、ついにお釈迦さまが臨終の時を迎える、その瞬間が詳細に描かれています。

お釈迦さまは、この時齢80歳。諸国を渡り歩く伝道生活を45年続けられた後、自分の生涯に終わりが近づいたことに気付かれ、弟子阿難尊者を連れ生まれ故郷に向かう最後の旅の途中であったそうです。
場所は、クシナガラ城の郊外。沙羅双樹の下に、頭を北に向け身を横たえている姿が描かれています(北枕)。

そこには、弟子阿難より報せを受けたお釈迦さまの弟子たちやお釈迦さまのお徳を慕う人々がその最後の姿を一目拝もうと次々に集まり、人のみならず近くに生きている象や牛・馬などの鳥獣、昆虫、さらには夜叉や鬼神まで集まり、ついには天より諸天・諸菩薩までもが姿を現し、お釈迦さまの臨終を悲しんだとされております。

弟子阿難は、お釈迦さまに対し「これから私たちは何を頼りにして生きてゆけばよいのですか?」と問いました。
するとお釈迦さまはこう答えられたそうです。「阿難よ、汝らはまず自分自身を灯明として拠り所にしなさい(自灯明)。その上で、法を灯明とし法を拠り所としなさい(法灯明)。他のものに頼ってはならない。」まず自分の命を見つめ直し、その尊さを実感する。その上で、仏教の教えを実践して、迷うことなく生涯をおくりなさいというお導きを残して下さったのです。
さらに、「万物は、移り変わり過ぎ去り行くものである(諸行無常)。だからこそかけがえのない今を大切にし、怠ることなく努力してゆきなさい。」という意味の言葉を残されて、静かに息を引き取られたそうです。

それは、今から約2500年前の2月15日。満月が美しく輝く夜であったそうです。
お釈迦さまの命の火が消えると、大地は鳴動し、空よりは天女たちの合唱や演奏が聞こえだし、お釈迦さまを見守っていた沙羅双樹は銀色に枯れてしまったそうです。
まさに、世界中がお釈迦さまのご臨終を悲しんだといえるでしょう。

お釈迦さまは、その生涯において、全ての生きとし生けるものが迷いから離れた悟りの境地に至れることをお示し下さいました。
私たちは、お釈迦さまのお徳を偲び、その最後の言葉をよく心に記して、日常を送ることが必要なのです。


常福寺では、毎年2月15日にこの涅槃図を本堂内に荘厳し、お釈迦さまのお徳を偲んでおります。涅槃図を拝んでみたい方は、どうぞお気軽にお参りくださいませ。