数ならぬ身となおもひそ玉祭り
元禄七年(一六九四)五十一歳の作である
句意
 遠く故郷を離れた異郷の空で一人さびしく死んでいったお前に、今こうして私の故里でお前のための初盆会をいとなんで、心からお前の霊を弔っている。私にとっては大事なお前だった。決して日かげ者の身などと思ってくれるなよ。
 「寿貞が身まかりけるときゝて」との前詞がある。「身まかる」とは死亡のことをさす。寿貞と言う女性の死んだのは元禄七年六月江戸深川庵で、その年の十月に翁自身も他界している。                        寿貞については諸説あるが、一言にしていえば寿貞は芭蕉の心の妻であった。芭蕉の側に寿貞がいたことは寧ろ当然で自然な生活であり、芭蕉の人間としての潤いも芽ぐまれたと思われる。
上野市農人町 愛染院(故郷塚)
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