名月に麓の霧や田のくもり
元禄七年(一六九四)五十一歳の作である
句意
 今宵十五夜の月は明るく照りわたってまことに美しい。北方を望むと高畑の山並みの麓には霧がうすくたなびき、それが町と山とにはさまれた一面の田や畑の方へのびて、それらの上にも薄く霧がかかっている。
 兄半左衛門の邸内にできた赤坂の新庵(無名庵)から眺めわたすと、伊賀盆地は一望の中にあり薄霧が麓の田の面を覆うていた。           その無名庵は故郷の門弟たちの温かい心の贈物であった。そこは心ゆくまで愛着を持った安住の場処であった。ここに翁らは八月十五日夜の月見の句会を催したのであった。
上野市 くれは水辺公園 
MENU MENU1