野ざらしを心に風のしむ身かな
貞享一年(一六八四)四十一歳の作である
句意
 旅の途中野たれ死にして、白骨になるかもしれない。そのことを覚悟して長途の旅に出ようとすると、折からの秋風がことさら身にしみてわびしい思いがする。
 二年前の暮、住んでいた芭蕉庵が江戸の大火で類焼、命からがら生きのびた芭蕉の心に「一所不在」の無常観が芽生えた。やがて真の芸術としての俳諧を追求するため、西行ら古人の詩心を求め、漂白の旅に人生を見いだす世界観、人生観が強く表れてくる。                       貞享元年八月それまでの草庵生活から心機一転、初めての文学行脚「野ざらし紀行」の旅に出た。この句は旅に出かける門出の吟で、芭蕉の詩人としての決意を物語っている句である。
 上野市長田 芭蕉の森
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