俤や姨ひとり泣く月の友
元禄一年(一六八八)四十五歳の作である
句意
 姥捨山に来てみると山の姿も哀れに趣深く、月の光も美しく照り輝いている。その昔、この月を眺めて独り泣いていた姥の姿が浮かんできて、何ともいえぬ物憂いた気持であるが、今宵はその俤を偲んで月を友としよう。
 主題は「姨捨伝説」であり、それを叙情の世界に再構築したものである。なお姥捨の月は「田毎の月」として、土佐の高知の桂浜、石山寺の秋の月と並んで日本の三名月といわれた。
上野市長田 芭蕉の森
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