年暮れぬ笠着て草鞋はきながら
貞享一年(一六八四)四十一歳の作である
句意
笠をかぶり、草鞋はいたままで、今年もとうとう暮れてしまった。
「ここに草鞋を解き、かしこに杖を捨てて、旅寝ながらに年の暮れければ
」との前詞がある。
「野ざらし紀行」で初めて文学的行脚を経験した旅人としての、初々しい実感
のこもる歳暮吟である。
芭蕉は藤原定家の幼少の歌である「旅人の笠着て馬に乗りながら口を引かれて
西へこそ行け」をふまえた作だと言ったという。この歌をふまえて「馬」を「草
鞋」に転化したものであろうか。