服部土芳
卒度往てわかな摘ばや鶴の傍
元禄九年(一六九六) 四十歳の作である
句意
 蓑虫庵の庭によく鶴が来ている。鶴が降りたったなら、そっと静かに近寄って初春の若菜を摘みたいものである。
 鶴はもちろん実在のそれであるが、八十八の米寿を迎えて腰が鶴のように曲がった土芳の従弟である広岡雪芝の祖母にもたとえている。そして今夜の催しはその祖母に迷惑のかからないように静かに楽しみたいという土芳の心づかいが感じられる。なお土芳たちは、正月には若菜の会と称していつも年酒を汲んでいたようである。
上野市日南町 蓑虫庵
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