服部土芳
月添ひてかなしさこぼる萩すすき
元禄十一年(一六九八) 四十二歳の作である
句意
 十五夜の月があたり一面を照らしている。その草原の中で一番目立つのは可憐な萩であり素直なすすきである。その萩にもすすきにも、そして草原のすべての草花にも、まんべんなく月が降りそそいでいる。
 兼好法師が隠遁生活を送って「徒然草」を稿したという草藁寺も、今は荒れ果てて名ばかりの畑地が残っているが、あたり一面は草原のようになっている。そしてこんな白々とした光景を眼のあたりにしていると、理由もなく悲しくてたまらなくなってくるという土芳の心境が感じられる。
青山町種生 兼好塚
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