服部土芳
蝶々も人交りしてあとや先
元禄十五年(一七〇二) 四十六歳の作である
句意
 春うららの中秘仏の薬師如来御開帳にお参りしたが、善男善女が処せましとばかりにあとさきしながら、列をつくって歩いている。そこへ何匹かの蝶々がひらひらと飛び交いながら、その人々の中へ入ってきた。蝶々も今日の陽気に浮かれ出したのだろうか。いや今日のご利益にあずかろうとしているようだ。
 元禄十五年は仏勝寺の秘仏薬師如来の三十三年に一度のご開帳にあたっていた。近郊近在からたくさんの人が集まってきてにぎわっていたようだ。土芳もそのご開帳に親友の猿雖や陽和とともにお参りした。その時の途中吟である。
上野市猪田 仏勝寺
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