花にうき世我が酒白く飯黒し
天和三年(一六八三年)四十歳の作である
句意
世間は花に浮かれて楽しむ春だが、貧しい自分にはむしろ心憂い世の中だ。
飲む酒は濁り酒、飯は玄米飯という暮しでは。
前詞に「憂方知酒聖、貧始覚銭神」とあり、これは白楽天「江南謫居十韻」
の中の詩句である。
心の憂い時にこそ酒の尊さがわかり、貧乏して初めて銭という神のありがたみ
に気づくの意味である。
白楽天の詩の心を受けて、貧しい世捨人の境涯を嘆じている。
そして浮かれる世の意味の「うき世」と「憂き世」を掛け、「白」と「黒」は技
巧的に対置されている。
句碑