荒海や佐渡に横たふ天の河
元禄二年(一六八九)四十六歳の作である
句意
荒波すさぶ夜の日本海。はるかな闇の中に佐渡の島影が黒々と横たわり、そ
の中天高く銀河が横切って、初秋の冴えた夜空に光っている。
「越後の駅出雲崎といふ処より佐渡が島を見わたして」との前詞がある。
「荒海」と「佐渡」で陰鬱な日本海の特質を形象化し、これに銀河を配した雄
大な宇宙的把握の中に、おのずから人間の卑小感、寂寥感がこもっている。
また芭蕉は佐渡を、重罪人遠流の哀史を背景に悲しく眺めている。その哀愁が
大自然の把握に作用した心象句でもある。
句碑