梅白し昨日や鶴を盗まれし      

貞享二年(一六八五)四二歳の作である

 

句意

 

 梅林の白梅が見事です。この海を愛して山荘に籠る亭主は、孤山に隠れて梅

と鶴を無上に愛した林和靖を偲ばせるが、和靖なら飼っているはずの鶴が見え

ぬのは、昨日あたり盗まれでもしたのだろうか。

 

「京に上りて三井秋風が鳴滝の山家を訪ふ 梅林」との前詞がある。

邸内の白梅に着目して宋の林和靖の故事に結びつけ、秋風の隠者ぶりを讃えた

挨拶句せある。

 

「梅」と「鶴」で和靖の故事を暗示し、中七、下五でこの故事を裏からユーモ

ラスに詠んでいる。

 

句碑

 

右京区嵯峨鳴滝 御室川左岸

 

 

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