春立つや新年ふるき米五升
貞享一年(一六八四)四十一歳の作である
句意
何事も気分一新の新年にあたって、乏しいながらも去年から持ち越した古米
五升の貯えはある。わが草庵の暮しは仕合せというものだ。
「春立つや」は立春を迎えて、新年を迎えた意に用いた
「新年ふるき・・・」は「新」と「旧」を技巧的に対置した措辞。
芭蕉庵には五升入りの瓢の米櫃があった。米五升はわずかな量だが、それを満
ち足りたとする心で詠んでいる。そして「ふるき」には乏しい生活への苦い思
いもこもっている
「似合はしや新年古き米五升」「我富めり新年古き米五升」の句もある。
句碑