おもしろうてやがて悲しき鵜舟哉
元禄一年(一六八八)四十五歳の作である
句意
鵜舟が目の前で、花やかな篝火を焚きつつ活発な鵜飼を繰り広げる時、面白
さはその極に達するが、やがて川下遠く闇の彼方へ消え去るにつれて、何とも
言い知れぬ空虚な物悲しさだけが心に残る。
「美濃の長良川にてあまたの鵜を使ふを見にゆき侍りて」との前詞がある。
鵜飼は月のない闇夜、舳先に赤々と篝火を焚き、鵜匠が一人で十二羽の鵜を手
綱でさばいて鮎を獲りながら、川上から川下へと、何艘も相前後して流れ下る。
その作業が目の前にきて繰り広げられるとき、見物の感興は最高潮に達するが、
やがて川下に流れ去り、篝火とともに闇の彼方に消える。句はその間の「歓楽
尽きて哀情深し」という心理を捉えている。
句碑