何にこの師走の市にゆく烏
元禄二年(一六八九)四十六歳の作である
句意
この寒空を烏が市の方へと飛んでゆく。何を好んで、ごった返す師走の市な
んぞへ飛んで行くのだろうか。
「この」は烏に掛るとともに、芭蕉自身をも暗示している。
そして烏を咎める口調の奥に、孤独を愛しつつもにぎやかな歳末の市に心ひか
れ、人中を懐かしがる自分への嘆息がこもっている。
句碑
舞鶴市引土 円隆寺
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