山吹や宇治の焙炉の匂ふ時
元禄四年(一六九一)四八歳の作である
句意
宇治の茶所で焙炉の匂いがたけなわになる頃、各地では山吹の花が真盛りで
ある。
「画賛」との前詞がある。
自画賛の画は山吹の一枝が画面の左から右へ咲き垂れる墨画である。
山吹の名所である宇治を連想しつつ伝統的美意識を一転させ、生活の匂いのす
る宇治の焙炉を取り合わせた俳諧的着想がある。
山吹の色と焙炉の匂いが微妙な余情をもって交響している。
「焙炉」は茶の葉を蒸して陰乾した後、炭火で乾燥させる乾燥器のことである。
句碑