雲雀より空にやすらふ峠哉
元禄一年(一六八八)四十五歳の作である
句意
空高く舞う揚雲雀よりさらに高い峠の上で休みながら、眼下はるかに雲雀の
囀りを聞いている。
「臍峠・多武峰より龍門へ越ゆる道なり」との前詞がある。現在は「細峠」
と呼ばれ、桜井から吉野への途次にある。
ふだんは空の上に聞く雲雀の声をはるか下の方に聞いた軽い驚きと、自分の立
つ位置の高さの実感から生れた句である。「空に」が、高い虚空にいる感じをよ
く出し、眼下に開ける広大な眺望、雲雀の囀るうららかな山間の春景色まで言
外に包みこんでいる。