若葉して御目の雫ぬぐはばや
元禄一年(一六八八)四十五歳の作である
句意
折しも初夏、あたりの樹々に若葉の色がみずみずしい。この若葉でもって、
鑑真和尚の盲いたお目の涙をそっと拭ってさしあげたい。
「招提寺鑑真和尚来朝の時、船中七十余度の難をしのぎ給ひ、御目のうち潮
風吹き入りて、終に御目盲ひさせ給ふ尊像を拝して」との前詞がある。
奈良市五条にある唐招提寺での作句である。
「若葉」と「雫」の語が映発して初夏の美観を深め、鑑真和尚へのいたわりを
やさしいものにしている。
奈良市五条町十三 唐招提寺
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