綿弓や琵琶になぐさむ竹の奥
貞享一年(一六八四)四十一歳の作である
句意
ひっそりとした竹林の奥のこの家に宿り、ひなびた綿弓の音を琵琶の音と聞
きなして、しばし旅愁を慰めている。
「大和に行脚して、葛下の郡竹の内といふ処はかの千里が旧里なれば、日ご
ろとどまりて足を休む」との前詞があり、北葛城郡当麻町竹の内に千里(粕屋
甚四郎)の家があり、この時芭蕉の旅に随って帰郷している。
「綿弓」は繰り綿を打って柔らかい打ち綿に製する道具で、小さな槌で絃を打
ち弾いて綿を作る時、ビンビンと琵琶のような音がする。