鶯を魂にねむるか嬌柳
天和三年(一六八三)四十歳の作である
句意
奈良は七代の帝都として栄え、七堂備わった大伽藍も多く、さらに古歌に名
高い八重桜もある。まさに絢爛たるめでたい古都である。
駘蕩たる春の昼下がり、たおやかな枝を垂れて眠るがごとき青柳に鶯が宿っ
て鳴いている。そのさまは眠る柳の精が夢の中で鶯と化し、鶯の心になって声
を発しているのかと錯覚させるほどである。
荘周が夢の中で胡蝶と化してヒラヒラと楽しく飛びまわり、自分は胡蝶なのか、
自分自身なのか区別できなくなったという故事「荘周胡蝶の夢」を模している。