みのむしのねを聞きにこよくさの庵
貞享四年(一六八七)四十四歳の作である
句意
 草庵にひとりわびしく住んでいる。もしこのような静かな寂しさを心の通いあった友と語りあったならばどんなに嬉しいことであろうか。ふと見ると木の枝に蓑虫がぶら下がっている。その蓑虫は昔から鳴くと伝えられている。どうかその虫の鳴く音を聞きに来てほしいものだ。
 江戸深川の芭蕉庵での句であり、真蹟には「くさの戸ぼそに住わびて、あき風のかなしげなるふゆぐれ友達のかたへいつかはし侍る」との前詞がある。                                    翁が吉野の花見に出発するまでの在郷中、蓑虫庵(さちゅうあん)を度々訪れ、ある時面壁の達磨像に「みのむしの・・・・」の句を画賛した一紙を懐中から取出して庵主である土芳に贈った。それ以来土芳は翁の許可を得てこの庵を「みのむし庵」と号した。
 吉野郡下市町 中央公園
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