水取りや氷の僧の沓の音
貞享二年(一六八五)四二歳の作である
句意
厳しい余寒に耐えて修二会の行を修する衆僧の、内陣を散華行道するすさま
じいばかりの沓の音が、氷る夜の静寂の中にひときわ高く響きわたる。
「二月堂に籠りて」との前詞がある。東大寺二月堂では修二会の期間中、所
願ある男女の参籠も許した。
旧暦二月一日から十四日間、東大寺の僧が二月堂に籠り、昼夜六時の行法を修
する。これが修二会で、その七日目と十二日の夜半、堂前の若狭井から霊水を
汲む儀式がお水取りである。余寒の殊に厳しい季節に行われている。
「氷の僧」で余寒の中で行法に心身をこらす厳粛な僧侶のイメージを象徴的に
表現している。