病雁の夜寒に落ちて旅寝哉      

元禄三年(一六九〇)四十七歳の作である

 

句意

 

 夜空を渡る雁の列から、一羽だけ急に舞い落ちたあの雁は、夜空に堪えきれ

なかった病気の雁だろうか。思わぬ所で、独り淋しく旅寝することだ。

 

 

 「堅田にて」との前詞があり、芭蕉は堅田滞在中、「拙者散々風引き候而、蜑

の苫屋に旅寝を侘び」(茶屋与次兵衛宛書簡)という目にあっている。

その旅先で病む孤独感を近江八景の一つである「堅田落雁」に即しつつ、落雁

に託して象徴的に表現している。

 

 

大津市堅田 本福寺

 

 

MENU        MENU7