海士の屋は小海老にまじるいとど哉
元禄三年(一六九〇)四十七歳の作である
句意
湖畔の漁家では、土間に置いた平笊の中で獲りたての小海老がぴちぴち飛び
跳ねている。その中にいとどが飛びこんで、一緒に跳ね回っている。
台所、縁の下など不潔な所にいる「いとど」も、新鮮な小海老と一緒くたと
いう侘しい漁家の写実である。形の似たものが一緒に跳ねている様子に俳諧的
興趣を催している。
「いとど」はえびこおろぎで、全体が黄褐色。体長約二センチ位でえび形に湾
曲し、長い髭をもっていてよく跳ねる。