五月雨に鳰の浮巣を見にゆかむ
貞享四年(一六八七)四十四歳の作である
句意
降り続く五月雨で今ごろは琵琶湖の水も増し、珍しい鳰の浮巣が浮き上がっ
て見えるはずだ。
さあこの雨の中、その浮巣を見に行こう。
芭蕉自ら、「句の面に俳諧の詞はないが、五月雨の中、わざわざ鳰の浮巣を見
に行くという酔狂、風狂の心自体に俳諧性がある」と言ったとある(三冊子)。
「鳰」はかいつぶりで、夏に葦、菰などの茂る湖沼の水面に水草を集めて巣を
作る。その巣は水面に浮かんだまま、水の増減につれて上下する。
甲賀郡土山町南土山 常明寺
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