一声の江に横たふやほととぎす
元禄六年(一六九三)五十歳の作である
句意
時鳥が鋭く鳴いて広い大川の上を飛び過ぎて、そのあとしばらくの間はその
声の余韻が水の上に横たわり、消えずにたゆとうているようだ。
蘇東坡「前赤壁賦」の中の「白露横江、水光接天」をふまえ、「白露」を「時
鳥の声」に換え、その鋭い声が長く尾を引いて水の上に揺曳している爽涼感を
演出している。
書簡には三つの句形が並記されていて、他の二句は「郭公声横たふや水の上」「ほ
ととぎす声や横たふ水の上」となっており、門人の意見を聞いている。