はがれたる身にはきぬたのひびき哉
元禄年中の作である
句意
盗人に荷物も着物もはぎとられて、やっと里近くまでやって来た時、村人ら
が布を打つ砧の響きを耳にすると、薄着の自分にはひしひしと響いてくる。普
通でも砧の響きはもの侘しく見に染むものであるのに。
芭蕉がこの山の中で白浪という若い追い剥ぎ盗人に出逢い、反古ばかりの荷
物までしらべられ、その上着ていた衣類まで剥がれた芭蕉が、それらの若い
盗人らに「正しい生業につくように」とか「旅人をいじめることをするな」
とか、仏法でいう自業自得の法や自縄自縛の理などを説教したという。そし
てそれを聞いた盗人はせめてもと下の衣類をかえして消え失せたという。