参加型学習・用語資料集 @
アイスブレーキング(ice breaking)
体験的参加型学習では、参加者の発言や行動に基づき学習を進めるため、まず参加者の心理的障壁や緊張を解く必要がある。緊張で固くなった身体や見知らぬものどおしの冷たい関係を解きほぐす(アイスブレーク)ために簡単なゲームや自己紹介などを行う。これがうまく行くと初対面のグループでも、その後発言や行動が活発になり学習が円滑に進む。
アクティビティー(activity)
「活発さ、活気、活動」の意。体験的参加型学習では、一つの学習単元・活動をさすこともある。
最近、行われているワークショップはアクティビティ中心のものが多い。参加者にノリのいい技法を追い求め、マニュアルにそってつぎからつぎへと手を変え品を変えるというやり方である。そして、参加者を楽しませるための技法にとらわれ過ぎてしまう。それは、ゲーム・ロールプレイ・劇や模擬体験などのいろいろなアクティビティで忙しく、それらに振り回され、ゆっくり考える時間、振り返る時間がなくなってしまう場合がある。その結果、このワークショップは何のためなのかという本来の目的が薄められてしまう。そこに陥らないために、ワークショップとは何なのか、何のためのものか、を常に考えながら学習を進める必要がある。
アクティブ(active)
「活動的な、積極的な」の意。
アレンジ(arrange)
「脚色する、整理する、手配する」の意。体験的参加型学習では、参加者のニーズや地域の課題にあった教材を提起する必要がある。既成のアクティビティーをそのまま活用するのではなく、それらを考慮して工夫していくことで効果が上がる。
ウェビング・チャート または ウェブ・チャート(web chart)
ブレーン・ストーミングなどで発想された多数の情報を蜘蛛の巣状の図で示すことにより、関連を図式化すること。
オープンエンド(open-ended)
問題の理解や解決は、1単位時間の活動や学習、単元では完結しない。また、それらは別の課題についての学習の際に形を変えて現れてくる。学習で生じた疑問や問題意識は、参加者のなかで持続していくことになる。特に、体験的参加型学習においては、活動の中でさまざまな疑問や問題意識が獲得されることを重視しており、それらを無理やりに《まとめ》てしまわずに、課題意識持続型《オープンエンド》の終わり方をすることがある。
グルーピング(grouping)
学習を進めるために必要なグループ分けをすること。どのようなグループをそのように作るかは体験的参加型学習においてはひじょうに重要な要素となる。
KJ法
東京工業大学名誉教授川喜田二郎さんの考案した創造性開発・問題解決方法。KJは、考案者川喜多二郎の略。収集した膨大なデータを整理するためのカードを使って1枚の図に収め、全体を見ながら討議して問題解決のヒントや着想を得る。収集したデータがすべて生かされて、全体図の中で自己主張していることで思わぬ発想につながることがある。
ゲーム(game)
学習の進行に遊び的要素を取り入れたもの。
シミュレーションとあまり意味は変わらない。
「権威の教育」と「変革の教育」
「知識伝達型」教育では、先生は生徒がなにも知らない、なにも持っていないことが前提となり、時には、ただただ一方的に生徒に知識を詰め込六だけに終わってしまうことにもなります。これを「権威の教育」とも言います。
「問題提起型」教育での先生の役割は大きく異なってきます。生徒一人ひとりは、それぞれ異なった豊かな経験・知識・技術・アイデア・関心・パワーを持っている、ということが前提となり、先生の役割は「質問する」こと、生徒の考え・声を「聴く」こと、それによって生徒が持っている豊かなものを「引き出す」こととなります。グループ活動を活用して、生徒同士、あるいは先生の持っている経験・知識も生徒のそれと重ね合わせながら、なにが問題なのか、なぜそうなのか、どうしたらよいのか、などを「一緒に考え合う」こともできます。また、問題提起・問題提示のきっかけとして簡単なゲームやエクササイズ、絵、写真、ポスター、スライド、ビデオ、物語、詩、言葉や文字などを用いた体験学習など工夫することによりいっそう効果を上げることができます。これを「体験的参加型学習」と呼んでいます。こうした教育を、「変革の教育」または「解放の教育」とも言います。
交通バリアフリー法
2000年11月15日より施行の「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」のこと。
「この法律は、高齢者、身体障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保することの重要性が増大していることにかんがみ、公共交通機関の旅客施設及び車両等の構造及び設備を改善するための措置、旅客施設を中心とした一定の地区における道路、駅前広場、通路その他の施設の整備を推進するための措置その他の措置を講ずることにより、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の利便性及び安全性の向上の促進を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。」(第1条目的より)
参加型学習
知識中心の講義型の学習や、教えるものと教えられるものとの関係を固定化した一方通行の学習に対して、教えるものと教えられるものとの関係が固定化されず、参加者の相互作用による理解が図られる。学び方重視の学習でもある。
ジェンダー(gender)
男女の生物学的な違い(セックスsex)に対して、心理的、社会的、経済的、文化的、慣習的、宗教的に形成された性差をいう。セックスが普遍的であるのに対して、ジェンダーは時代や地域、社会によって異なる。男女間の不均衡な役割分担や力関係を是正していくためには、ジェンダーを固定化する要因に着目することが重要である。
シミュレーション(simulation)
「模擬実験・訓練」の意。問題の複雑さや危険さのために実際的な体験が不可能である事象について、仮想的な現実を模擬的に作成して体験する。そのなかでの立場や役割に応じた体験を通して、5〜6人のグループによるロールプレイと組み合わせて行う場合もある。演じる立場の理解や感情移入ができ、現実の問題の複雑さが理解できる。
ステレオタイプ(stereotype)
融かした鉛を流し込んで作った印刷用の複製版。人権学習では、偏見や決めつけによる凝りか固まった紋切り型の考え方を意味する。
ダイヤモンドランキング(diamond ranking)
問題解決法のひとつ。それぞれに優先順位をつけていくことで、解決のための視点や技能を身につけていく方法。9つの解決策をダイヤ型に並べる方法。何を優先するのかの話し合いを通して、問題のつながりや、問題解決の長所や短所が理解でき、価値の明確化や判断が得られる。指導者は、さまざまな解決策が問題に対してどのような視点や意味を持つのか明確にしておくことが重要である。
バリアフリー(barrier free)
障害者や高齢者と健常者とが分け隔てなく同じものが使え、利用できるように「障壁」をなくしこと。
ファシリテーター(facilittor)
「ものごとを楽にする、助ける人」の意。体験的参加型学習や教育の場では、参加者や子どもの学びや気づき、理解を、当事者に則して支え、助ける人である。また、心理学的には、クライアント(相談者)の内面の未分化な感情や無意識を意識化し、明確にする過程を手助けする人という意味で使われる。教育(education)は、元来、子どもの可能性を引き出す(educat e)という意味である。
ふりかえり(reflection)
体験的参加型学習では、はじめに行うアイスブレーキングとならんで、重要な場面の1つ。一方通行型の講義や授業では、最後に教師が一方的に《まとめ》てしまい、参加者や子どもの疑問や感情を置き去りにしてしまうことが往々にしてある。最後の行う《ふりかえり》は、参加者の疑問や感情の起伏をお互いに分かち合い、自己や他者の理解をすすめ、学習を深めていくものである。特にオープンエンド型の学習では重要な役割を持つ。その意味ではファシリテーターの真価が問われる場面である。
プログラミング(programing)
部屋の隅
メディア・リテラシー教育(media literacy)
リテラシーは識字の意味。メディアからの情報を理解するということにとどまらず、クリティカル(単なる批判ではなく、検討・見直し・批評の意味で)に分析し、再構成することのできる能力を養う教育。また、E−メールの普及などから発信する立場からの能力の教育課題も重要視されるようになった。
ユニバーサルデザイン(universal design)
バリアフリーの考え方を発展させ、可能な限り最大限、すべての人に利用可能であるように生活環境などをデザインする概念が、「ユニバーサルデザイン」です。最初からだれにでも優しい商品や環境であるためのデザインのことで、「ユニバーサル」は、「一般的に、普遍的に、すべての人にかかわる」を意味します。従って、「障壁」をなくすという考えから、最初から障壁のない商品や環境を作ることを、当たり前にしようとする考え方です。
この考え方は、障害を持った工業デザイナーであり、アメリカ、ノースカロライナ州立大学教授でもあったロナルド・メイスンが、1980年代のはじめから提唱したものです。同大学のユニバーサルデザインセンターが示す7つの原則が知られています。
・多様な能力を伴ったユーザーにとって、使い勝手が良く、入手しやすい。
・使用に柔軟性があり、ユーザーの好みや能力に応じて、幅広く対応できる。
・ユーザーの経験、知識、言語技術などに関わらす、操作が簡単であること。
・商品などの情報が、ユーザーの知覚能力に関わらず、分かりやすく提供されること。
・偶然や思いがけない行動を含めて、誤操作から生じる問題が、大きな問題とならないこと。
・使う際には、効率的に、やすやすと、そして最小限の労力ですむこと。
・ユーザーの身体特性に関わらず、使いやすい大きさであること。
ロールプレイ(role playing)
2人ないしは数人のグループで行い、ある場面に関し価値観が対立したり、多様に分かれる立場を演ずる。異なる立場への共感が得られやすい。問題意識が高まり、問題解決の力が身につく。
ワークショップ(workshop)
仕事場とか作業場という意味だが、教育の文脈では参加者の活動(アクティビティー)
を伴う研究集会や実習と言う意味で使われる。
辞書:工作所、仕事場。また、研修会、研究集会、参加者の自主的活動方式の講習会。