芭蕉翁 大阪句集 

 

(大阪句碑になっている句は棒線を追記)

 

 

元禄一年 四十五歳(奈良―大阪訪問)

 

杜若語るも旅のひとつ哉         (大阪 紙屋保川弥右衛門宅?)

 

元禄七年 五十一歳(奈良―大阪訪問)

 

菊の香にくらがり登る節句かな     (奈良〜大阪の旧街道 暗峠)

 

菊に出て奈良と難波は宵月夜      (大阪高津 洒堂亭)

 

猪の床にも入るやきりぎりす      (大阪高津 洒堂亭)

 

升買うて分別替る月見哉        (大阪 住吉大社)

 

秋もはやばらつく雨に月の形      (大阪 其柳亭)

 

秋の夜を打ち崩したる咄かな      (大阪 潮江車庸亭)

 

おもしろき秋の朝寝や亭主ぶり     (大阪 潮江車庸亭)

 

この道や行く人なしに秋の暮      (大阪新清水 料亭「浮瀬」)

 

松風や軒をめぐって秋暮れぬ      (大阪新清水 料亭「浮瀬」)

 

この秋は何で年寄る雲に鳥       (大阪新清水 料亭「浮瀬」)

 

白菊の目に立てて見る塵もなし     (大阪 斯波園女亭)

 

月澄むや狐こはがる児の供       (大阪 畦止亭)

 

秋深き隣は何をする人ぞ        (大阪 之道亭?)

 

旅に病んで夢は枯野をかけ廻る     (大阪 花屋仁右衛門方)

 

(大阪での作品ではないが、大阪句碑になっている名句を抜粋)

 

芋洗ふ女西行ならば歌よまん      (貞享一年 四十一歳)

 

宮守よわが名を散らせ木葉川      (貞享一年 四十一歳)

 

観音のいらか見やりつ花の雲      (貞享三年 四十三歳)

 

名月や池をめぐりて夜もすがら     (貞享三年 四十三歳)

 

古池や蛙飛びこむ水の音        (貞享三年 四十三歳)

 

雲雀鳴く中の拍子や雉子の声      (元禄二年 四十六歳)

 

あかあかと日はつれなくも秋の風    (元禄二年 四十六歳)

 

尊がる涙や染めて散る紅葉       (元禄四年 四十八歳)

 

葛の葉の面見せけり今朝の霜      (元禄四年 四十八歳)

 

口切に堺の庭ぞなつかしき       (元禄五年 四十九歳)

 

春もやや気色ととのふ月と梅      (元禄六年 五十歳)

 

卯の花や暗き柳の及び腰        (元禄七年 五十一歳

 

涅槃会や皺手合する数珠の音      (元禄七年 五十一歳

 

行く年や薬に見たき梅の花       (年次不詳)

 

御命講や油のやうな酒五升       (年次不詳)

 

楳咲てよろこぶ鳥の気色かな      (年次不詳)